「とうとう」

 さすがスーパースターと豪語するだけはある。フォルゴレという男は、いつ、どこで、何をしていてもさまになった。たとえそれが、昼日中、サンビーム宅の居間で、オレンジジュースの入ったコップを片手に胡坐をかいているというシチュエーションであっても。
「じゃあじゃあ、フォルゴレは全世界のラガッツァやバンビーナ全てを愛してるんだね」
 彼の向かい側に座ったアヒル口の子供が、瞳をキラキラと輝かせながら言う。
「その通りだよ、キャンチョメ。彼女たちは私の大事なファンだから」
 確かにスーパースターのオーラを全身から発散させているフォルゴレは、ウインク一つで全世界の異性を陥落させるだろう。
「けれどね、本物の英雄は皆を思う愛のほかに、心に真の愛を一つ持っているものなんだ」
「まことの愛?」
 身を乗り出すキャンチョメにフォルゴレはおごそかに言った。
「ただ一人の愛しい人に捧げるための愛を私は持っているのさ」
「フォルゴレ! カッコイイー!!」
 夢中になって拍手するキャンチョメの前で華麗なポーズを見せるフォルゴレに、サンビームは素直に感心している。
「名演説だね、フォルゴレ」
 その賞賛にフォルゴレがそっくり返る。
「でもどうしてわざわざ私の家まで来てそんな話を?」
「それはもちろん・・・」
 フォルゴレがすっと膝をついて、サンビームの手をやさしくとった。
「講義の後は実技を見せないといけないからだよ」
「ちょっと待て!」
 派手なアクションで鍛え上げられたフォルゴレの腕に抱き上げられたサンビームが絶叫するが、イタリアの英雄は意に介さず自分のパートナーに向かってウインクして見せた。
「キャンチョメも好きな子ができたら、こうやってエスコートするんだぞ」
「うん。わかったよ、フォルゴレ」
 ”高貴なる魂”を認め合った二人のテンションについていけず、ひっそり涙するしかないサンビームであった。



フォルサンです。キャンチョメはこうやってフォルゴレから恋愛の奥義を学んでいくんですね(違)。


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