どれだけ
困ったなあ・・・とサンビームは一人で天を仰いでいた。
仕事帰りの凍みるほどの冷たい夜風が、今は逆にありがたい気がする。
恋愛関係には疎い方だという自覚はさすがにあったが。
まさか自分の半分以下の年齢の、しかも同性にそういう気持ちを持ってしまう日が来るとは。
どうすればいいのかも、思いつかない。
もちろん自分のこんな気持ちは誰にも悟られるつもりはサラサラないし、相手にだって絶対に言うつもりはない。
・・・ほとんど犯罪レベルの感情だ、とサンビームは一人で苦笑した。
今まで何人か付き合ったことのあるのは女性ばかりだった。
しかも、しっかりしているようでどこか抜けている自分を恋人にしてくれるのは大概年上の人ばかりで。
それなのに、なんでこんな事になってしまったんだか・・・。
ふー、と吐いた溜め息は白くなって風に流されていく。
モヤモヤとした気持ちをスッキリさせたくて帰り道にある公園のベンチでこうして座って夜空を見上げてみたりはしたものの、結局は堂々巡りで。
・・・明日も仕事だ。
そう思い、サンビームは重い腰を上げた。
カンカンと音を立てながらアパートの階段を登る。
その途中で伝わってきた気配に、サンビームは眉をひそめた。
ああ、今日も居るんだな。
内心でだけ溜め息をつき、努めて普段通りの表情を作る。
階段を登りきり、視線を上げれば。
「お帰り、サンビームさん」
「清麿・・・こんな寒いところに・・・・風邪をひいてしまうよ?」
サンビームはいつも通りの笑顔を作って思い人へと向けた。
部屋へと入って、まずお湯を沸かす。
「サンビームさん、夕飯は?」
「うーん、これからなんだけど・・・今日はもう疲れたから作る元気もなくてね・・・
レトルトのチャーハンでも食べようかと思って。それでも良ければ清麿も食べるかい?」
「俺はお茶だけでいいよ。サンビームさん最近また忙しいみたいだな。
母さんに頼んで、惣菜持ってこようか?」
いつもの定位置に座り込んで話しかけてくる清麿に、サンビームは慌てて首を振った。
「いいよいいよ!いつも清麿の家にお邪魔しては厄介をかけているんだ。これ以上甘えられない・・・。
今日だってただのグウタラだしね。
明日はちゃんと自分で作るよ。・・・ああそれか、仕事帰りにどこかで食べてくるか・・・そっちの方が手っ取り早いかなあ」
レトルトのそっけない夕飯をレンジに入れながらサンビームは苦笑した。
さっきまであんなにモヤモヤとしていたくせに、いざ一緒に過ごしてみれば何とかなるものだ、と思いながら。
「ところでさ、サンビームさん」
「ん?」
もそもそと遅い夕飯を口に運ぶサンビームに、清麿が紅茶を啜りながら話しかけた。
「サンビームさんて、俺の事好きだろ?」
「!!!・・ゲホッ!」
清麿の爆弾発言で飲み込みかけたチャーハンを噴き出しそうになったサンビームに、清麿がにじり寄る。
「ずーっと自覚がなさそうだったから気長に待ってたんだけど・・・
ここ最近急に俺の事困った顔で見るようになったから、少しは自覚が出たんじゃないかと思ってたんだけど?」
「じじじ、自覚ってなんの?っていうか、清麿目が怖いよ?」
「そーゆーサンビームさんは何でそんなに真赤な顔してるわけ?」
ジリジリと寄って来る清麿から同じだけ後ろに下がり続けていたサンビームは、もちろんあっという間に壁際へと追い込まれた。
顔の両脇の壁に手を付かれて、身動きが取れなくなったサンビームは仕方なく目の前の清麿の顔を見上げる。
ホトンド覆い被さられているような恰好に、ますます顔が赤くなる。
「なあ、そうなんだろ?サンビームさん」
「な、なにが??き、清麿!顔が近付きすぎだ!!!」
真赤な顔でサンビームが悲鳴に近い声を出す。
そんなサンビームをしばらく見つめてから、清麿は笑みを浮かべた。
「サンビームさん、マジで顔、真赤!あんた分かり安すぎるよ!」
「は?なにが?」
いきなり笑い出した清麿に戸惑った顔をするサンビームへ、清麿は一気に近付くと唇を重ねた。
目を見開いて固まってしまったサンビームをよそに、充分その感触を楽しんでから唇を離す。
「ねえ、これってどういう意味かわかる?」
ニヤリと清麿に笑いかけられてから、やっとサンビームは掌で自分の唇を覆った。
「・・・夢?」
目を見開いたままだったサンビームが、首を傾げて言った言葉に、今度こそ清麿は笑い出した。
「くくく、サンビームさん、それ天然過ぎ!
・・・俺がどれだけ長い間、アンタが自分の気持ちに気付いてくれるか待ってたかわかってる?
それなのに自覚したと思ったらさっさと諦めモードの入ってるしさあ・・・」
「なんで・・・・そんな事・・・・」
呆然と言うサンビームに、清麿は笑って答えた。
「アンタの目はね、アンタが思ってる以上に雄弁なんだよ」
そう言って、また唇を重ねる。
それでもまだ信じられない、という顔のまま自分を見つめてくるサンビームに、
「キスしてんだから、目ぇくらい閉じてくれよな?」
清麿の言葉に、耳まで赤く染め上げたサンビームがなにか言おうと口を開きかけた。
すると清麿はさっさと唇を塞いでサンビームの体を壁へと押し付ける。
そのまま荒く唇を奪いながら、清麿はそっと薄目を開けた。
今度こそキツく目を閉じているサンビームを確認してから、唇をそっと離す。
「あのさあ、好きな人じゃなきゃ、この寒空の下いつ帰ってくるかも分からない人を待ち続けられるわけないだろ?
つーか、俺がどれだけ前からアンタにアプローチかけてたか、サンビームさん分かってる?」
「・・・」
声も出せないまま首を横にブンブンと振るサンビームに、清麿は溜め息をついた。
「ああもう、そうなんだよな、サンビームさんてこの手の事は本当に鈍感なんだよな。だからさ」
「はぇ?」
いきなり清麿に押し倒されてサンビームは間抜けな声を出した。
「今日はメデタク相思相愛が確定したわけだし、思う存分俺の気持ちを知って頂こうとv」
「は?え?清麿???」
次の日の早朝、真赤な顔をしたサンビームが上機嫌な清麿をアパートから送り出す姿は幸い誰にも見られることはなかった。
清サン強化月間に展示していた作品ですv
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