特別な存在
正々堂々とした勝負の結果。
サンビームとウマゴンの見守るその前で、ガッシュと清麿は新たな魔物の子供との戦いに勝利していた。
お互いの名を呼び、燃える魔本のそばで別れを悲しむ二人の姿にサンビームたちはどこか切なげな視線を向ける。
すっかり魔物の子供の姿が消え失せた後、そこにうずくまったまま泣きじゃくっている少年にそっと近付いて、
サンビームはその肩に労りを混めて手を乗せた。
その手を思い切り振り払い、サンビームにキツい視線を向けた少年は、憤りのこもった声で叫んだ。
「俺たちが負けるなんて!アイツはあんなに頑張っていたのに!
王になる為にあんなに、あんなに努力していたのに・・・・!
あの努力が無駄になるなんて俺たちの存在はそんなモンだったっていうのか!??
俺は・・・・アイツは・・・・っ!!!」
そのどこか八つ当たりめいた言葉は、それでもあまりに深い哀しみに包まれていてガッシュは辛そうに眉をひそめた。
その事に気付いた清麿は唇を開きかけ、しかし結局なにも言えないまま唇を噛み締める。
そんな二人にも一瞬視線を向けてから、サンビームは真っ向から少年の視線を受け止めた。
「・・・それは違うな」
強いサンビームの声が少年に向かう。
「君も、君のパートナーも『そんなモン』なんかじゃない。・・・何にも変えがたい、『特別』な存在だよ?」
少年の前に膝をつきサンビームが言った言葉に少年が噛み付いた。
「じゃあなんで!なんでアイツは負けたんだ!俺たちは・・・!!!」
「それは・・・それでも『誰か以上に特別』ではないからさ」
言われた言葉を反芻し、少年の目が大きく見開かれた。その瞳からまた涙が零れ落ちる。
「君たちの努力が無駄だったわけじゃない。
君たちの存在が小さいわけでもない。
ただ、誰もが誰か以上に特別なわけじゃないから。あとは自分で頑張るしかないんだよ。
君たちに勝ったガッシュたちが、君たちに負けないくらい大変な努力と辛い思いをしてきたって事なんだよ。
パートナーとの別れは切ないけれど、それでも彼と行動を共にした事は君にとっても彼にっても素晴らしい糧になってるだろう?
それを卑下してはいけない。・・・・・説教じみた事を言って済まないね」
じっと少年の瞳を見つめていたその視線を外して、サンビームは立ち上がった。
それに合わせて少年の視線も上がる。
その瞳から敵意が消えている事に気付いてサンビームは改めて少年に微笑んだ。
「もう、大丈夫みたいだね?」
「うん、ありがとうおじさん。・・・八つ当たりして・・・ゴメン」
少年の言葉に微笑を深めてサンビームは少年の肩をポンポンと叩く。
「じゃあ、俺・・・行くよ」
「ああ、気をつけて」
ガッシュや清麿たちにも別れの挨拶を済ませ、少年は駆け出した。
その姿を4人で見守る。
その姿が見えなくなる頃、ガッシュがサンビームのそばへと足を進めた。
「・・・サンビームどの」
「なんだい、ガッシュ」
「さっき私はあの者の悲しい声を聞いていて、なんでだか悪い事をしてしまったような気がしておったのだ。
でも、違うのだな?私は・・・」
「そう、君は胸を張っていればいいんだ。ただ、君は魔界に帰ったあの子の分も更に頑張らないとね。
それが勝者の責任だ。・・・ああでも、無理をしろと言ってるわけじゃないよ?彼との戦いやそれで得た思いを糧にして欲しいって思うんだ」
そう言って微笑むサンビームにガッシュは赤く頬を染めて強く頷いた。
「うぬ!私は頑張るのだ!!!それがショウシャノセキニンだからの!」
「メルメルー!!」
友人の気持ちが浮上した事が嬉しくてポクポクとウマゴンも蹄を打ち鳴らした。
そのまま元気良く遊びだしたガッシュとウマゴンを微笑んで見つめているサンビームに、今度は清麿が近付いてきた。
「・・・ありがとう、サンビームさん」
「?なにがだい、清麿」
「俺・・・ガッシュになんて言っていいかわらかなくて・・・さっきの言葉、あの子に向けていたけれど、そのままガッシュへの言葉のようだった」
「そんなつもりでもなかったんだけどね・・・でもガッシュの気持ちを明るく出来たのなら嬉しいよ」
清麿に笑いかけてから、またサンビームの視線はガッシュとウマゴンに向けられる。
その横顔をじっと見つめてから清麿は言った。
「・・・サンビームさんて不思議な人だよな。・・・なんだか俺にとって『特別な存在』になりそうな気がする」
「それは嬉しいな」
清麿に向き直って笑うサンビームに、清麿は少し目を据わらせて言った。
「サンビームさん、俺の言ってる意味、わかってないだろ?俺は・・・」
言いながら一歩サンビームへと清麿が近付いた時。
「何の話をしておるのだーーーーーーーーーー!!!!!!!」
「メルメルーーー!!!!」
「げふっ」
ものすごいスピードで突っ込んで来たガッシュとウマゴンがその勢いのままにサンビームに飛びついた。
反動で思い切り傾いだ上半身を支えきれず、サンビームはその場に倒れこむ。
「大丈夫かサンビームどの!」
「メルメル!!」
「お前らが言うな!平気かサンビームさん!」
「ははは、大丈夫大丈夫。ちょっと油断したかな」
笑って起き上がろうとしていたサンビームの胸に馬乗り状態のまま、ガッシュは真剣な顔でサンビームの顔を覗き込んだ。
「サンビームどの。さっき、サンビームどのに色々と言ってもらえて、私は本当に嬉しかったのだ。
嬉しくてドキドキして、なんだか走り回りたくなるくらいの気持ちになってしまったのだ」
「・・・・ふふ、それは私も嬉しいな」
一生懸命自分の気持ちを伝えてくれようとするガッシュの姿に、サンビームは優しく微笑みかけた。
その笑顔を受けて、ますます頬を赤く染めるパートナーに気付いて清麿の眉がひそまる。
「・・・おいコラ!いい加減にどけ!サンビームさんが重いだろう!」
そう言いながらガッシュをサンビームの上から移動した清麿に「ああ、ありがとう」と起き上がったサンビームはまたニッコリと笑いかけた。
「メルメルメルメル!メルメルーーーーーー!!!」
「うん?どうしたんだい、ウマゴン」
自分の腰に縋り付いて泣くウマゴンの頭をサンビームはヨシヨシと優しく撫でる。
なぜか涙目のウマゴンをせっせと撫でていたサンビームは、ふと周りの緊迫した気配に首をかしげた。
「・・・あれ?みんなどうしたんだい?顔が怖いよ?」
肝心のサンビームにまったく気付かれないまま、サンビームにとっての「特別な存在」をかけた熱いバトルが繰り広げられようとしていた。
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