おまじない
今日は私の休みの日だ。
それを知っていた訳でもないだろうに偶然とは怖ろしいもので、お昼過ぎ現在。我が家にはいつものメンバーが集結している。
まあ、この部屋がみんなの寛げる場所であるというのはとても嬉しいことだ。
私はたった今この部屋に来たばかりのフォルゴレとキャンチョメのために冷たいお茶をコップに注いでリビングへと持っていった。
「アイスティーでよかったかな?」
そう言ってフォルゴレとチャンチョメにコップを差しだすと。
「ああ、サンビームが入れてくれたものなら・・・」
コップを手渡した手をフォルゴレにそのまま握りこまれて、中腰のままフォルゴレと見詰め合う。
・・・大スターというのはやはりオーバーアクションがデフォなのだろうか?
そう思いながら豪奢な金髪や長い睫毛を見ていたら。
「ほぐ!!!」
ウマゴンがいきなりフォルゴレの側頭部に飛び蹴りを食らわせた。
壁に激突するフォルゴレ。
「だ、大丈夫かいフォルゴレ!」
「ああ、気にするなよサンビームさん!フォルゴレは頑丈なんだから!」
「そうそう、グッジョブよウマゴンv」
私とフォルゴレの間に立ちはだかり笑顔で言う清麿と恵の言葉に、グッジョブ?と悩みながら私はウマゴンへと振り返った。
「・・・ウマゴン。ダメじゃないか意味もなく人に飛び蹴りなんて・・・」
「メルメルメル!メルメルー!!!」
サンビームさんは僕のー!!って怒られてもなあ・・・・。
私がウマゴンのパートナーなのはわかりきっているのに・・・。
ベロベロと私の顔を舐めてくるウマゴンが、なぜか他のメンバーに向かってニヤリと笑って見せている。
・・・それを悔しそうにみんながウマゴンを見てるのはなんでだろう?
とにかく・・・。
「ウマゴン、私はずっと君のパートナーに決まってるじゃないか。
私がフォルゴレに襲われていたわけでもないのに・・・」
「メルー!!!」
鈍感?なにが??そんなに泣かなくても・・・・
ウマゴンの頭を撫でながら涙を拭いてやる。それでもエグエグと愚図るパートナーに、ふと自分の子供の頃の事を思い出した。
その思い出のままに涙の止まらないウマゴンの目元に軽くキスをする。
私のキスにビックリしたのか、ウマゴンが丸い目をますますまん丸にして泣き止んだ。
ああ、良かった。
「ふふ、涙の止まるおまじないだよ」
ニッコリと笑いかけると、
「メルメル〜vvv」
ウマゴンも満面の笑顔で私に抱きついてきた。
やれやれ、これでウマゴンの機嫌も直ったしみんなで・・・・。
「わあ!Σ(゚M゚;)」
仲間たちの方へと視線をうつしてみたら、なぜかみんなが一斉に涙を流していた。
「どどど、どうしたんだい、みんな!部屋に埃でもたまっていたかな?掃除はしていたつもりなんだがっっっ」
「・・・・」
無言でこっちを見つめながら泣き続けるメンバー。
「め、目薬を探して・・・」
薬を入れている棚へと向かおうとした私の腕を、ガシリとフォルゴレが掴んできた。
「目薬よりもおまじないが効くと思うんだ」
「メル・・・」
フォルゴレの言葉にウマゴンが何かを言いかけたが、泣いているのに笑顔の清麿がウマゴンをどこかに連れて行ってしまった。
・・・清麿、その顔怖いよ?
混乱した頭のままフォルゴレに向き直すと。
なぜかみんなが一列に並んで私を見ている。
その最後尾に清麿も並んで。あれ?ウマゴンはどこに行ったんだ?
キョロキョロとウマゴンを探そうとした私の両肩を、またもやがっしりとフォルゴレに掴まれて、仕方なく視線をそっちへと戻した。
ああ、やっぱりみんな泣いている。
「・・・・おまじないをしたら止まるのかな?」
おずおずと聞いてみると、並んでいるメンバーが全員力強くコックリと頷いた。
・・・まあ、いいけれど。
ああ、みんな子供時代を思い出したのかな?
懐かしい事ってやりたくなったりするものだしね。
私はニッコリ微笑んで、とりあえず先頭のフォルゴレへと顔を近付けた。
そのまま全員の目元にキスをしたら。
なんだかわからないが部屋中が盛り上がっている。
・・・・みんなすごい笑顔で・・・・どうしたんだろう?
あ、それよりもウマゴンを探さないと。
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