「じわじわ」

 サンビームは安堵する。自分を見つめるその瞳が彼の少年のものではないことに。
 サンビームは安堵する。自分をかき抱くその腕が彼の少年のものではないことに。

 なのにどうして涙が止まらないのだろう。
 この男の口づけは熱くてこんなにも身体を溶かすのに。
 サンビームは気づいていなかった。自分の心がまだ捉われたままであることに。


 ジードに求められるままに唇を開きながら、サンビームは酒精に染まった吐息をつく。彼のペースにあわせて強い酒をあおってしまったことを少し後悔していた。
 強い風が体温を奪っていくというのに、なぜか絡み合う舌は火傷をしそうなほどに熱い。
 どちらからともなく唇を離すまでどのくらいの時間が経ったのであろうか。身体の疼きに瞳を潤ませるサンビームを促してジードは歩き出した。
 その意味を察したサンビームは無言で広い背中に従ったのだった。


 また来てしまったな。サンビームは宿のジードの部屋に通されてぼんやりと考えた。
「テッドは・・・?」
「ああ、あいつは近くの教会で同じ年頃の友達ができたってんで泊っていくらしい」
 ジードとあの魔物の子供は互いの自由こそを尊重しているらしい。自分とウマゴンの関係とはまったく違うが、薄情さを感じないのは二人の間に確固たる信頼があるからだろう。
「シャワー、浴びるか」
 問われてサンビームは首を振った。身体は冷えていたがどうせすぐに温めてもらえるのだ。
 昨夜乱したベッドのシーツは新しく張り替えられている。そのことが何故かおかしくてくつくつと笑うサンビームをジードが背後から抱きしめた。
「サンビーム。いいんだな」
 問いかけの意味がわかって、サンビームはたくましい腕にそっと自分の手を添える。
「だめだったら、ここまで来ませんよ」
 その答えにジードは無言で相手の身体をまさぐった。耳朶を食み、うなじをなぞる。自分の服を器用に脱がしていく太い指にサンビームが全てをゆだねるのを確認して、ゆっくりとベッドに引き込んだ。
「あ・・・あっ・・・・・・」
 弾む胸をベッドに預けて横たわるサンビームの背中をとろけるような熱が這い回る。肩甲骨から尾骨へと下りていき、形のいい臀部の奥にたどり着いたジードはまだ固いつぼみをほぐすように味わい始めた。
「・・・ひっ! はあん!」
 サンビームがたまりかねて腰を浮かすと、前の花芯が掴まえられる。下肢を無様に広げさせられて奥まで相手の視線にさらされているのを感じてもがくが、ジードの腕からは逃げられなかった。
「すまねえな」
 台詞とは裏腹にジードの指がサンビームの前も後ろもかき回す。せり上がる快感に涙をこぼしながらサンビームは声を上げた。
「あ、あふっ! イ・・・くぅ・・・・・・っ!」
 急激な膨張と弛緩、ジードの手の中に吐露してしまったサンビームは虚脱したのか自分の精が潤滑油の代わりに塗りこまれてもわずかに腰を震わせて喘ぐだけだった。
 その痴態を横目にジードは自分の服を脱いだ。セックスで相手だけをイカせたのはこれが初めてだった。その乱れる姿に我を忘れて攻めたててしまった自分に驚きを禁じえない。交わってこそのセックスだというのがジードの持論だった。それがあろうことが男をイカせることに夢中になるとは。
 サンビームという男に新たな興味がわいた。
 ジードはシーツに沈む男を抱え上げると、向こうを向かせてベッドに腰掛けた自分をまたぐように座らせた。充分に猛ったジードの自身をサンビームの腰が恐る恐るくわえ込んでいく。
「お前の中は温かいな」
 背後からのジードの言葉さえ、サンビームを敏感に刺激した。呼吸も必死で殺す男の様子に焦らされて、ジードは両の手で相手の左右の胸を掴みその乳首を指先で転がす。
 甘い声が響いた。サンビームの胸の先で色づいた一対の芽が武骨な指に揉みしだかれる。二人のどちらが先に動き出したのかはわからないが、結合部のいやらしい音がその激しさを物語っていた。反り返った自身を思わず握ったサンビームの手をジードの一回りは大きな掌が包み込む。
「うっ・・・うっ・・・うっ・・・・・・」
 波が激しくなる。度の過ぎた快感はサンビームの理性を弾かせた。自分を貫くジードを締めつけながら湧き上がる衝動に身を任せるサンビームをジードはさらに強く攻めたてる。
 やがて言葉にならないサンビームの喘ぎに限界を感じたジードが一際深く突き上げ最奥に精を放つと、サンビームも応えるように絶頂を迎えたのだった。


 激しかった絶頂の後、ジードはベッドに腰掛けたまま煙草を吸っていた。
 大きく呼吸しながらサンビームはジードの胸にもたれかかり、背中を預けていた。自分の奥にはまだジード自身が突き立っていたが、じんわりと快感を促すそのつながりをサンビームは受け入れている。
「いい格好だぜ」
 ジードはあやすようにサンビームに触れる。大きな掌が投げ出されたサンビームの足を撫でていた。
「折角のご開帳を正面から拝ませてもらいたいもんだが」
 サンビームの耳元にジードの低い声が滑り込む。
「やめてくださいよ。男の裸を見ても楽しくないでしょう」
 サンビームの返事を聞かずに、ジードは一人で合点する。
「ああ、風呂場に鏡があったな」
 あっさりそう言うと、ジードは両腕でサンビームの腿を支えて立ち上がった。決して軽くはないサンビームを貫くモノがいっそう深く彼を抉る。
「何をするんですか?!」
 突然の快感を超えた痛みに声を上げるサンビームを抱えたままジードが答える。
「どうせならつながったところを見たいだろ」
「見たくありません!!」
 逃げるに逃げられず青くなるサンビームの首筋に、ジードは笑ってキスするのだった。



ジドサン第3弾です。なんかラブくなってしまいました。切腹。



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