今度目が覚めた時には -7-
サンビームは真っ白い夢を見ていた。
ただ果てしなく真っ白で影が無く、足元は綿のように柔らかい。
自分にすら影がない事を不思議に思わないまま、サンビームは足を進めていた。
どこかから自分を呼んでいる声の元へと。
いくら歩いてもどれだけ進んだかもわからないその景色。
それでもサンビームは黙々と歩き続ける。
それだけが今、自分に出来る事だとサンビームには分かっていた。
歩いて歩いて歩いて。
それでも変わらない景色のその先を見据えながら足をまた前へと出す。
今歩くのを止めれば、それは彼への冒涜になるから。
ただ真直ぐに、サンビームは歩き続けた。
自分の抱く気持ちの証に。
「ティオ!まだサンビームさんの意識は戻らないのか!!!!??」
「うっさいわね!黙ってアンタはサンビームさんの手を握ってればいいの!
だいたい出血が多過ぎたのよ!
仮死状態でないとトンネルを抜けられないからってもうちょっと考えなさいよ、このウマ!!!」
「・・・うう」
ウマゴンにキツイ言葉を吐きながらもティオは渾身の力をこめて癒しの力をサンビームに注ぎこんでいた。
ほぼ完全に体の傷は塞がっている。
それでも体が受けたダメージのすべてを癒せるわけではない。
サンビームの体力と気力にかかっている部分はかなり大きいのだ。
「サンビームさん!さっさと起きてよ!
じゃないとこのウマの首絞められないじゃないー!!!」
軽口なのか本音なのか分からないティオの叫び声が部屋中に響いたその後、ウマゴンがいきなり立ち上がった。
ガバリとサンビームに覆い被さるような恰好でサンビームの青白い顔を覗き込む。
「・・・・シュナイダー?」
ティオの期待に満ちた言葉への返事もしないまま、ウマゴンはサンビームの両頬を自分の掌で包み込んだ。
するとそれを合図にしたかのように、サンビームの瞼がゆっくりと持ち上がる。
「・・・ウマゴン・・・・」
自分を見つめ、小さく呟いて微笑むサンビームにウマゴンの眉間にしわが寄った。
「・・・・ちょっと時間がかかったけど・・・・」
「うん、分かってる。・・・頑張ってくれてありがとう、サンビームさん」
涙をこらえているウマゴンから視線を外し、サンビームはティオへと目を向けた。
大粒の涙を零しながら見つめているティオに、以前の通り微笑みかける。
「大きくなったね、・・・・すごくキレイになった。助けてくれて・・・ありがとう」
「ふふ・・・・仕方ないからその言葉で今回の件はチャラにしてあげるわ。感謝してよね?」
必死に強気の態度を取るティオにもう一度微笑んでからサンビームはまた目を閉じた。
「・・・なんだか・・・・眠いんだ・・・・」
「うん、まだ体が完全じゃないんだから、いっぱい眠って体を休めて、サンビームさん」
「・・・ウマゴン・・・じゃないか。・・・こっちではシュナイダー、だよね?」
「う・・・まあどっちでもいいけど」
「でも・・・やっぱり君はシュナイダーだよ・・・ふふ、結構かっこいい名前だったんだね?」
「・・・・だから気付くの遅すぎだって・・・・」
泣き笑いをしながらサンビームが寝ているベッドの脇に座り込んで、もう一度恋人の手を握り込む。
「・・・シュナイダー・・・寝ても・・・」
「うん、大丈夫だよ、絶対・・・」
ウマゴンからシュナイダーへと呼び名を変えられた事にくすぐったさを感じながら、恋人の耳元へと彼は何かを囁いた。
その言葉が嬉しくてサンビームは微笑を深めてから、小さく答える。
「・・・・・ありがとう」
この先、一体自分にどんな運命が待っているかも分からないまま、それでもサンビームは恋人の甘い約束に身を委ねて、
眠りへと落ち込んでいく。
「今度目覚めた時には絶対に俺がそばに居るから。・・・これからはずっと、そばに居るから」
end
後書き兼言い訳
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